ハシゴを外された「拡張 Podcast」に未練タラタラ

その昔「拡張ポッドキャスト」というものがございました。いや、厳密に言えば今も存在しているんですが、言い出しっぺの Apple さん自らがシレ〜っとハシゴを外し、その素晴らしさが骨抜きにされた格好になってしまいました。


「拡張ポッドキャスト」がどんなもの(だった)かと言いますと、「チャプター(章)」「画像」「リンク」を埋め込んだ音声ファイルがポッドキャスト配信できる‥‥という夢のようなシステムでありまして、通常のポッドキャストでお馴染みの MP3 ではなく AAC(Advanced Audio Coding)というファイルフォーマット(拡張子で言うと「.m4a」や「.m4v」)が使われます。

これの何がそんなに素晴らしかったかと言いますと、特に素敵なのがリンク機能でした。音声ファイルへの URL の埋め込みが可能になれば、番組の中で「この Web サイトをご覧ください」と、いちいち URL を口頭で読み上げなくても、ディスプレイに表示されているリンクボタンを押すだけでサイトに飛べます。しかもリンクは任意の場所に何ヶ所でも埋め込み可能です。ポッドキャストを「ビジネスに活用したい」と考える企業なら、飛び付きたくなる機能だと思うんですが、当時この機能を有効に活用していた番組はそれほど多くありませんでした。

次に「画像」の埋め込みですが、これは MP3 でも可能です。ただ MP3 に埋め込めるのが1枚だけなのに対し、拡張ポッドキャストは、先に説明した「リンク」同様、任意の場所に何枚でも入れられます。判りやすく言うと「音声解説つきスライドショー」のような形です。本来なら動画にするしかないような事が音声ファイルでできてしまうんです。

最後に「チャプター(章)」ですが、これも任意の場所にいくつも埋め込み可能でした。例えば「オープニング → 話題A → 話題B → 話題C → エンディング」という構成の番組を聴いたとしましょう。けど、あとになって「話題B」の部分だけを聴き返したくなる事ってないですか? そんな時もチャプターが設定してあれば、頭出しが可能になります。


‥‥と、こんなに素晴らしい拡張ポッドキャストですが、ロクに活用される事もなく、ポッドキャストの歴史から消されかかっています。Mac を使って音声の編集を行なうポッドキャスターには定番の Apple の「GarageBand」というアプリも、Ver.3〜6には拡張ポッドキャストを作るための機能が備わっていて、チャプター、画像、リンクの挿入もガレバン内で行なう事ができていましたが、ヴァージョンアップによってそれらの機能は削られてしまいました。また、以前はトークと連動して BGM のレヴェルを自動調節してくれる「ダッキング」など、ポッドキャスト用の編集機能も装備されていましたが、現行の「GarageBand」にはありません。

また、音声を再生する側の iTunes からも「拡張ポッドキャスト」に関連する機能が削除されつつあります。現時点では辛うじてチャプターと画像機能だけは残っていますが、拡張ポッドキャストのキモとも言えるリンク機能は姿を消しました。この一連の動きの陰には、もしかしたら Apple にとっての「不都合な真実」が存在していた‥‥とか、何かオトナの事情があったのかな?‥‥と、ついつい勘ぐりたくもなりますが、可能性だらけの拡張ポッドキャストからハシゴが外されてしまった事は、個人的に残念で仕方がありません。

※ 拡張ポッドキャストのサンプルとして、僕が過去に配信した音楽番組を紹介しておきます。
podsafe SHUFFLE! 33(2012年12月23日配信)
http://fredio2.seesaa.net/article/309327562.html
この音声ファイルには、頭出し用のチャプターと、曲ごとのアートワーク、そして各ミュージシャンの Web サイトに飛ぶためのリンクが埋め込んであります。